60分プレーヤー岡崎慎司、佐藤寿人
昔とは異なり、現代サッカーは各ポジションに求められるスキルが高くなってきている。
ゴールキーパーとセンターバックは足元の技術、サイドバックは攻撃参加、ボランチは得点力が求められる。
最近ではフォワードがハードワークすることが当たり前とされ、得点以外にも守備での貢献という部分で力を発揮しなくてはいけない。
例外的に、守備をしなくてもよいフォワードは世界的に見てもバルセロナのメッシぐらいである。
守備をしなくてよい理由は得点に専念できること以外にも、前線でメッシを残しておくことで、相手ディフェンダーが被カウンター対策としてメッシをマークしなければならないことだ。
前線でメッシを残しておくことで相手は攻撃に人数が掛けられない分、ある主メッシは前線で守備をしていると言える。
そんなメッシと真逆のプレースタイルなのが、プレミアリーグのレスター・シティーで活躍する岡崎慎司だ。
ハードワークが持ち味の岡崎は前線から相手ディフェンダーにプレッシャーを掛けにいき、幾度となくボールを奪いショートカウンターへと繋げる。
しかしハードワークが故に途中交代が余儀なくされ、90分フルタイムで出場した試合が少ないとうデータがある。
サンフレッチェ広島の佐藤寿人選手も同様、昨季途中交代の多かった選手だ。
途中交代数は33試合にも昇り、たった1試合を除いて後はすべての試合で途中交代していたことになる。
途中交代の多い岡崎と佐藤では少し交代の意図が違うが、その詳細について述べていく。
今季シンデレラストーリーの立役者の一人となった岡崎は、チームの優勝に大きく貢献した。
チーム内得点王ヴァーディー(24得点)と組むツートップでは役割分担がはっきりしており、得点を取るヴァーディー、縦横無尽に走り廻る岡崎というコンビであった。
岡崎はゴールこそ6得点とフォワードでは物足りなさが感じられるが、現地で評価されている選手である。
その理由は前線からハードワークし、チームの黒子に徹することで欠かせない選手へと進化を遂げていった。
特にスプリント数が多く、途中交代ながら一試合を通してスプリント数が脅威の86回を記録することもあった。(日本と海外のスプリントによる規定は異なる)
特徴付ける数字はスプリント回数以外にも、途中交代の多さである。
今シーズンの出場データ
節 | 出場記録 | 節 | 出場記録 |
1 | ○ | 20 | ▲25 |
2 | ▽62 | 21 | ▽77 |
3 | ○ | 22 | ▽59 |
4 | ▲45 | 23 | ▽62 |
5 | ▽45 | 24 | ▽87 |
6 | ▽64 | 25 | ▽81 |
7 | ▽45 | 26 | ▽61 |
8 | ▽70 | 27 | ▽69 |
9 | ▽45 | 28 | ▽63 |
10 | ▲27 | 29 | ▽45 |
11 | ▲2 | 30 | ▽65 |
12 | ▲45 | 31 | ▽76 |
13 | ▲17 | 32 | ▽64 |
14 | ▽60 | 33 | ▽62 |
15 | 一 | 34 | ▽59 |
16 | ▲2 | 35 | ▽73 |
17 | ○ | 36 | ▽67 |
18 | ▽69 | 37 | ▽62 |
19 | 一 | 38 | ▲45 |
○=フル出場、▽=途中交代、▲=途中出場、一=出場なし、数字は出場時間
今季28試合でスタートから出場した岡崎であったが、90分間通してプレーした試合はわずか3試合のみに留まり、残りの25試合は途中でプレーを退いている。
スタートから出場した試合の一試合平均プレー時間は64分。
第21節から第37節の17試合の間で途中交代していることから、シーズン中盤辺りから監督も岡崎の起用方法を確立したのであろう。
惜しくも?プレミアリーグ途中交代記録の26試合にわずか1試合届かなかったが、最終節に途中出場として出場したことを見れば、監督がこの不名誉とも見てとれる記録を敢えて避けたのかもしれない。
2012、2013、2015シーズンで3度ものリーグ制覇を果たしたサンフレッチェ広島のエース佐藤寿人は、現在Jリーグ歴代得点ランキング2位に付けている。
2012シーズンではJ1リーグのMVPと得点王に輝き、その他にも2015シーズンでは12年連続2桁得点という記録も達成した。
今季は出場機会に危ぶまれているが、昨季の彼の起用方法は特徴的なものであった。
2015シーズンの出場データ
節 | 出場記録 | 節 | 出場記録 |
1 | ▽79 | 18 | ▽56 |
2 | ▽70 | 19 | ▽54 |
3 | ▽72 | 20 | ▽65 |
4 | ▽73 | 21 | ▽66 |
5 | ▽65 | 22 | ▽62 |
6 | ▽72 | 23 | ▽61 |
7 | ▽68 | 24 | ○ |
8 | ▽66 | 25 | ▽56 |
9 | ▽61 | 26 | ▽63 |
10 | ▽54 | 27 | ▽61 |
11 | ▽59 | 28 | ▽71 |
12 | ▽53 | 29 | ▽59 |
13 | ▽68 | 30 | ▽62 |
14 | ▽62 | 31 | ▽59 |
15 | ▽59 | 32 | ▽64 |
16 | ▽61 | 33 | ▽72 |
17 | ▽67 | 34 | ▽61 |
○=フル出場、▽=途中交代、数字は出場時間
昨季34試合すべての試合でスタートから出場した佐藤であったが、途中交代した試合は33試合にまで昇り、フル出場を遂げた試合は僅かに1試合のみであった。
佐藤も岡崎と同じく一試合平均出場時間は64分。
実はMVPと得点王を獲得した2012シーズンにも途中交代した試合が何度かあり、2013シーズンにもその数は増えていった。
その背景となったのは森保監督の考え方であり、年齢を重ねてきた佐藤をフル出場させたくないという思いからであった。
2013シーズンには起用方法を廻り、森保監督と佐藤は意見衝突したと言われているが、それがあったからこそ佐藤は2015シーズン迷うことなくチームのためにプレーできたとされている。
そして、2015シーズン途中交代が多かったもう一つの理由として、浅野琢磨の存在が挙げられる。
60分までハードワークした佐藤に代わり、残り30分で出てくる浅野は相手チームからすれば手に負えない選手である。
得意のスピードを活かし、相手が点を取りに前のめりに出たところを一人でカウンターを成立させられる選手だ。
そんな佐藤→浅野のゲームプランも成功し、2015シーズン広島は見事リーグ優勝を成し遂げた。
同時に2015シーズン浅野は新人賞を獲得した。
60分プレーヤーと一括りにしても、岡崎は相手ディフェンダーの体力消耗、佐藤は交代する浅野の武器をより引き出させるのが狙いと交代要因に対する違いはあるが、一つの策略であることには変わりはない。
60分プレーヤーという分野で岡崎、佐藤が結果を出したことで、これからこういった選手が増えていくことが期待される。
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